安井金比羅宮(京都府京都市)には現在、約600点にのぼる絵馬が所蔵されており、その多くは江戸時代後期の文化文政時代から大正時代にかけて奉納された、歴史的価値のある貴重なものです。
安井金比羅宮内の絵馬館に展示されているもので、大絵馬約50点の中には、長年の風雨にさらされたことによる劣化が著しく、書かれた文字や描画が消失してしまっているものも少なくありません。


そこで今回、 GFX100 II IR(赤外線カメラ)を活用し、失われた文字の解読を試みました。
FUJIFILM GFX100 II IR
安井金比羅宮の宮司を務める鳥居氏は、今回の文化財保護プロジェクトに取り組むにあたりGFX100 II IRの採用を決めました。
「長年の風雨により肉眼での判読が困難となっている絵馬の解読には、専門知識に基づいて赤外線カメラの活用が最善であると考えました。その結果、想像をはるかに超える鮮明な画像が得られ、大変満足しております。このような文化的に貴重な絵馬を50年後、100年後の後世に伝えるため、適切な保護に努めるとともに、複製を作成し、多くの皆様にご覧いただきたいと考えております。」(安井金比羅宮 宮司:鳥居氏)

1億200万画素のラージフォーマットセンサーによる圧倒的な解像性能に加え、高い赤外線への感度を実現するGFX100 II IRによる赤外線撮影は、顔料の種類によっては表面の絵の具の下に隠された下書きや、一度消された文字を可視化できる特性があります。この技術を用いることで、風化によって失われた文字情報を復元し、絵馬が持つ歴史的・文化的価値をより深く解明することが可能となります。


PHOTOGRAPHER’S VOICE
絵馬の木目と消失した文字が同化している状況で、肉眼では見えない情報を引き出す赤外線撮影は非常に強力な手法です。GFX IRバージョンは、その高解像度と赤外線への感度で、まさにその目的のために設計されたカメラと言えるでしょう。
操作性が良いと感じられている点も、実際の現場での作業効率を考えると大きなメリットです。
このカメラを活用して貴重な文化財や美術品を撮影し、それらの情報を正確に記録・保存することは、社会貢献に大きく繋がり失われつつある文字などを可視化することで、歴史的な背景や文化的な価値の再発見にも貢献できる可能性があると考えます。
西嶌 漱介 -SOSUKE NISHIJIMA- (フォトグラファー)
「算額」:GFXで蘇る過去からの問いかけ
江戸後期、日本では算数(和算)がブームとなり、人々はパズルかクイズのような感覚で算数の問題に取り組み、熱心に勉強していたといいます。「算額」は17世紀頃から一般に奉納されるようになったそうで、当初は学力向上の願いや学問に対する感謝の意を込めたものでした。後になると「自分はここまで難しい問題が解けるようになったんだ」と見た人に自慢しようとわざわざ難問を絵馬に書いたり、問題だけを絵馬に書いておき、解けた人が解答をまた絵馬に書いてかけておく、といった当時の人々のコミュニケーションもあったといいます。
安井金比羅宮の絵馬館で見られる天保12年(西暦1841年)奉納の算額は比較的簡単な問題とのことなので、自信のある方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

〈安井金比羅宮・金比羅絵馬館〉
日本独特の信仰絵画である絵馬を保存・展示するため、古い絵馬堂の建築美をなるべく損なうことなく改築し、昭和51年に開館した日本初の絵馬ギャラリーになります。
(現在改装工事中 2027年春「新絵馬館」オープン予定)
詳細はこちらのウェブサイトをご覧ください。( http://www.yasui-konpiragu.or.jp/facilities/ )
撮影協力 安井金比羅宮
