ポートレート撮影に必須の大口径・標準レンズXF50mm F1.0を触れる機会を得たことを嬉しく思う。
テスト撮影では明るいレンズの定番のナイトポートレートではなくスタジオと室内を選んだ。絞り開放は軟らかだがすごく良好な描写を得ることができた。
大口径のレンズは、人の目で見ることができない大きなボケを写し出すことができ、どう撮っても被写体をドラマチックにしてくれる。
35mm換算75mmというのはスタジオ撮影でも使いやすい画角なので、スタジオ撮影にもロケ撮影にも活躍してくれるだろう。
今回の作品は撮って出しのみで構成している。
操作性、ハンドリングに関して、F1.4シリーズやF2シリーズのXFレンズと比べるとかなり大きいが、X-T4やX-Pro3に装着するとバランスが良いことに気が付く。
長時間の撮影でも疲れることなく、ストレスなく撮影ができた。筆者的にはX-Pro3に装着した際に集中力がより増して撮れたのが印象的だ。このレンズの5つの魅力を語っていこう。
1.ナチュラルかつ綺麗なボケ味による立体感
ナチュラルで綺麗なボケ味による立体感の表現が秀逸で、特に絞り開放時のボケはさすがだ。
寄っても、引いてもしっかりと被写体を引き立てるナチュラルなボケは、撮影者の意図を反映しやすく、フォーカスして欲しい部分への視線誘導が非常に容易にできる。
ボケは嫌なざわつきもなく、とても綺麗にボケていくことで立体感、奥行き感を演出してくれる。
スタジオにて、窓の光を演出するライティングで撮影。
モデルの背中側から入る光が右から左へと流れ、綺麗なグラデーションを生んでおり、F1.0の圧巻のボケ味が寄りのポートレートに奥行きと深みを感じさせる。
こちらは自然光とLEDライトのミックスライティングで撮影。 少し絞ることでモデルの表情、白シャツやシーツの質感を出すことができた。ハイライトの粘りも良いため明るい背景で白い衣装を撮る際もかなり撮りやすい。
2.絞り開放の軟らかなスキントーン描写
絞り開放からシャープすぎず、軟らかく美しいスキントーンを再現し、色のりもすごくいい。人物 撮影において、肌の描写の問題は切り離すことができない。肌質、トーン、色の出方はレンズによ って変わる。XF50mm F1.0の肌の描写に言及する為にスタジオでの撮影を選択したが、ナチュラ ルで軟らかな肌を表現し、淡い色の衣装も綺麗に発色してくれた。
ソフトボックスを使った王道ライティングでの撮影。陰影も綺麗で、滑らかなスキントーンも綺麗に表現できている。
窓からの自然光のみでの絞り開放の描写も、大口径ならではの自然なイメージだ。ピント面から滑らかにボケていくことで、モデルの表情に視線誘導することができた。
3.大口径とオートフォーカス性能の両立
F1.0という明るいレンズでありながら、AFで軽快に撮影ができる。今までF1.0などの大口径レンズではAFはほぼ使えず、使えたとしても使い物にならないものが多かった。大体はMFで操作をしていたと記憶している。 XF50mm F1.0はAFもしっかりと使え、テンポよく撮影ができた。ワンオペで様々なテクニックを駆使する場合はAFが有用で、カメラを片手で操作ができることが重要だ。 このクラスの大口径レンズにして、これが簡単に実現できる点が素晴らしい。
レースの布を揺らすようにして背景を作っている。こういう撮影では背景とモデルの表情が重要なので、テンポ良く撮影する必要がある。顔・瞳検出AFをオンで撮影。
ほとんどフォーカスを外すことなく、テンポ良く撮影することができた。
レンズ前にカラーフィルターを当て、前ボケを利用。レンズ前に片手でフィルターを入れたが、AFが迷うことはなかった。
4.わずかな光を活かす表現力
ストロボ(瞬間光)と定常光の両方が、僅かな光でも感じることができるF1.0の表現の幅を広げてくれる。 明るいレンズは環境光を感じる能力が高いと言える。瞬間光と自然光、定常光をいい塩梅にミックスさせるスローシンクロテクニックがある。暗いレンズではスローシャッターで撮影しなければいけないが、絞り開放がF1.0であれば、かなりシャッタースピードを残した上でのシンクロ撮影が可能だ。
低照度の光も感じることができるので、スローシャッターにしなくても背景に当てた定常光の色を出すことができた。ストロボと定常光のミックスライティングもしやすく、様々なイメージを作り出せる。
暗所で地明かりだけでの撮影。F1.0という明るさは様々なシチュエーションでもISO160で撮影できるので、繊細かつ美しい画質が得られた。
5.ピント面のシャープな描写
柔らかさだけではなく、ピントピークのシャープな描写が素晴らしい。XF50mm F1.0 R WRは基本的にはボカして撮りたいと思うレンズだが、絞った時の描写は絞り開放時とは打って変わり、し っかりと美しく、まつげの一本一本、肌の質感まで繊細に描写してくれる。35mm換算75mmというのはスタジオでも使いやすい画角なので、スタジオ撮影でもロケ撮影でも活躍してくれるだろう。
印象的かつ大胆な陰影を表現するため、絞りをF2.8まで絞った。滑らかなボケ味は残しつつ、ピント面の描写が一気にシャープになる。硬いイメージを作りたい時にもただシャープなだけではなく、
なだらかなボケも残せる点は秀逸だ。
F13からF1の比較で、ライティングの光量以外変えていないが、絞りによってやはり印象が変わる。描写のピークはF5.6くらいだろう。F1は環境光を感じているため、ライティングイメージがすご
く変わる。レンズ一本で軟らかな印象とシャープな印象を兼ね備えている。
さらに、GFX100で撮影した作品と比較してみてもセンサーサイズの違いを覆しかねないほどの描写力をもつレンズだ。
XF50mmF1.0 R WRは写真作品のクオリティを引き上げる。APS-C機であるX-T4とラージフォーマットのGFX100。 センサーサイズ、画素数が違うので比べようがないかと思ったが、二枚を見比べると綺麗なボケ味で、違和感なく並べることが出来るクオリティだ。撮影手法によってGFXとXシリーズのカメラを違和感なく切り替えられる。
結論
XF50mmF1.0 R WRはXシリーズに革命を起こすレンズだ。絞り開放ではシャープすぎない良好な描写と、大きく滑らかな前ボケ後ボケを味わうことが出来る。 いかなる状況下でもモデル、被写体を浮き立たせ、引き立たせ、奥行きを感じさせる写真を撮ることができる。F1.0という明るさのため、暗所の耐性も当然良い。ナイトや室内、街灯などの地明かりだけでも充分明るく撮影をすることができる。 この一本で寄りも引きも、なんでも撮れるのではないかと思わせてくれる。今後もこのレンズと共に作品を作っていきたい。そう思わされた一本だ。