Different Breed: エリック・ブーベ x X-Pro3

2019.10.23

ロードトリップの途上にて

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予定は何もなかった。このX-Pro3の実機テストも。
娘がベルリンに引っ越すことも。
プランらしきものといえば、この3週間はフランス中を車で移動する、ただそれだけ。
なので、いつものように対応し、解決策を見つけ、トリップを再開、この繰り返しだ。
カメラをテストする最良のやり方は、あらゆる撮影条件のもとで使ってみること。
そこで、ロードトリップに出て、いろんなイメージをつくってみる。ルポ、ドキュメンタリーフォト、あるいは自分の過去の作品から触発されるさまざまなイメージを。

これは見る目をきたえ、自分の写真知識に縛られないイメージを見つけるいい機会だと思う。私は、安全地帯の外へ出て危険な状況に身を置くのが好きだ。そうやって学んでいく。目は常に利いているわけではないので、ここぞというときに創造意欲をピークにもっていくことはできないし、ましてや何週間もピークを保つなんてむりだ。それができればすばらしいし、写真家としては大いにやりやすくなるのだが。

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自分自身と対話すること、常に。私にとって写真とはそういうものであり、美などには興味がない。大事なのはエモーションや問いを引き出すこと。答えを示すなんてことはやりたくない。いちばんよくないのは客観性だ。

エモーションを引き出すものは、コンポジション、フレーミング、主観性、光と影、タイミング、視点というようにさまざまある。もちろん、簡単とはほど遠い。私にとって、写真を撮ること、イコール苦しみであり、探し続けることであり、けっして届きはしない高みを目指してもがくこと。でも、努力はする、後悔はしない。
好きなのは人間だ。人々が歩く、抗議する、動く、その姿を追い続け、そのときどきで理由は異なるけれども人々の間に身を置く。言わば、終わりのないテーマ。確かにこの上なく難しいことではある、同時代の人々を撮るのは。何も起きないところで、写真を撮ろうなんて誰も思わないような平凡な状況で、これだと言えるイメージを見つけるのは実に難しい。

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X-Pro3を手にすると、さあ創るぞ、という意欲が湧きおこる…続いて、うらやむ気持ち、おもしろいと思う気持ち、なんでもやってみようと思う気持ちが生まれてくる。満月の夜の眺望、窓の反射に何もかもはめ込もうとする試み、静かな瞑想のイメージ、日常とは違う何かを見つけるためのスポーツイベント、典型的な写真報道、このシーンは二度と来ないと思う特別な瞬間…。

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何もかも撮ってみたくなる。このX-Pro3と、私のF2トリオ、XF23mm、XF35mm、XF50mmとの組み合わせは、いくら使っても疲れを感じない。写真を撮りたい、ただそれだけだ。私はこのキットで世界中をまわるだろう。X-Pro3は言ってみればオーケストラマンみたいなもの。汎用カメラとしてのさまざまな機能を備えている。どんな種類の写真も好きな自分には、まさにぴったり。
私はむりにでも限界を広げるのが好きだ、心理的、肉体的な限界、自分の地力を広げたい。でも、富士フイルムのカメラが屈することはけっしてない、私よりもずっと強い…X-Pro3はそういうカメラだ。

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