X-E5とCLASSIC CHROMEと私— 映像作家の逃避
10年前、世界の見え方をがらりと変える決断をした。それが富士フイルムへの乗り換えだった。その理由は一つ。CLASSIC CHROMEの存在が大きかった。
写真を始めたのはフィルムカメラからだった。あの独特のムードや質感、そしてどこか懐かしい感覚がたまらなかった。今もその感覚を追い求めている。現実の世界とアートの境界線にある、時を超えて心に響くトーンを。CLASSIC CHROMEはまさにそのバランスを与えてくれる。そして、10年という時間を経てもなお、ぼくはその魔法に囚われ続けている。

映像作家としての生活は、常に動きの中にある。何百ものカメラ機材に囲まれ、その重量に押し潰されそうになることも少なくない。撮影現場では、一秒一秒が綿密に計算され、すべてのフレームが計画されている。その混沌とした状況の中で、写真を撮ることは贅沢な行為となってしまうのだ。
予備のカメラを携え、テイクの合間に静止画を切り取り、自分のためだけにシャッターを切る瞬間は、ほんのわずかながらも貴重なひとときである。

だからこそ、 X-E5 にXF23mmF2.8 レンズを組み合わせたカメラは、単なる道具を超えた存在となった。日常の相棒であり、気軽に手に取ることができる逃避の道具でもある。肩にかけていれば存在を忘れてしまうほど軽やかで、ふとした瞬間にふさわしいフレームが現れるのを待つことができる。川岸を下りたり、混み合った街中を抜けたり、崖の縁に立ったりしても、まったく邪魔になることはない。そしてその小ささと控えめな姿のおかげで、被写体の人々はより自然に、自由にふるまうことができるのだ。

X-E5を絞り優先モードに設定し、CLASSIC CHROMEを選ぶと、余計なことを考えずにシャッターを切るだけになる。頭の中で思い描いたイメージを再現しようと、何時間も編集に費やすことはない。カメラはまさに自分が求めていたものを、そのまま写し出してくれる。昔は、撮影した感覚を追い求めて深夜までパソコンの前に座り込んでいたものだ。だが今では、CLASSIC CHROMEの2つのFSレシピのおかげで、デスクに向かう時間をまるごと省けるようになった。その分、外へ出て写真を撮る時間を増やし、画像をいじるのではなく、実際の瞬間を紡ぎ出せるようになったのだ。

今、インドのアッサムにいて、長編映画の撮影に臨んでいる。スケジュールはタイトで、日々は長く、現場のエネルギーはまさに狂気じみている。しかし、まれに訪れる休みの日には、そのすべてから離れる。美しいこの州のまだ見ぬ片隅へと足を踏み入れるのだ。手つかずの小道、標識もない村々、まるで名前のない川の流れ。そんな日はゆったりとした、瞑想のような、そして心を癒す時間となる。そして何度も、その瞬間瞬間を切り取るのは、いつもX-E5とCLASSIC CHROMEだ。目に映る光景を、永遠に存在してきたかのような記憶へと変えてくれる。

私にとってCLASSIC CHROMEは、ただのフィルムシミュレーションではない。それは一つの「見る」方法であり、写真が単なるピクセルや紙以上のものであることを思い出させてくれる感覚だ。CLASSIC CHROMEは、いつもその心の琴線に触れる色合いを届けてくれる。