Salty Skipper ― CLASSIC CHROMEで切り取る 作業台とウォーターラインの風景
写真が “瞬間を切り取る” 以上の意味を持つ場所があり、そこでは写真は人と人をつなぐ体験になる―私にとって、ワークショップはまさにそんな場所です。木の匂い、長く受け継がれてきた伝統、工具、動きの中にある集中―そして何より、それらすべてに命を吹き込む「人」。自分の技を極め、献身的に働き、物語を持つ人々。シャッターを押すずっと前から、すでにそこには物語が存在しています。
こういったルポタージュでは、私は長年 CLASSIC CHROME を最優先で使っています。
そのクリーンでドキュメンタリー的なルックは、余計な演出を排し、大切なものに焦点を当ててくれます。だからこそ、私はこのフィルムシミュレーションを信頼しています。
また CLASSIC CHROMEは非常に柔軟です。街中、湖畔、工房の中―どんな光や色でも自然に馴染みます。ストリートからスナップ的なドキュメンタリーに切り替えても、安定して信頼できる結果を出してくれます。

CLASSIC CHROMEが特別な理由
CLASSIC CHROME は特定のアナログフィルムを基にしていないフィルムシミュレーションです。その「どのフィルムにも属さない」 という点こそが魅力です。富士フイルムはこれを「20世紀のフォトジャーナリズム誌のイメージに着想を得た、架空のフィルムシミュレーション」と説明しています。
PROVIA や PRO Neg. がクリアで自然な色を特徴とするのに対し、CLASSIC CHROME は抑制の美学を持っています。控えめな発色、クールなシャドウ、少なめのマゼンタ。色が主張しすぎず、瞬間そのものが前に出てきます。
この抑制のおかげで、CLASSIC CHROME には静けさや重みが宿ります。ドキュメンタリーや報道的なテーマにぴったりで、「演出っぽさ」ではなく「素のままの空気感」を作り出します。
しかし、一見控えめに見えるそのトーンの奥には、深みと確かな魅力があります。
主張しすぎないからこそ、私は物語を誠実に伝えたい場面で CLASSIC CHROME を選択します。

私の FS レシピ:Salty Skipper
この CLASSIC CHROME のFSレシピを「Salty Skipper」と名付けました。潮風にさらされた船乗りのように、無骨で誠実で、どこか海の気配がする―そんなルックのキャラクターを表した名前です。このFSレシピは、強い日差しの屋外から、自然光と人工光が混ざる工房の柔らかい光まで、コントラストの大きな環境で力を発揮します。R200 を使うことでハイライトを守りつつ、影にも十分な深みを残しています。
色はあえて“海”を意識して設計。カラークロームブルー を「強」にして、空、海、影のブルーを深くする―けれど、不自然にはしません。そこに少し暖かめのホワイトバランスを加えることで、木材や肌、細かな色のディテールが調和よくまとまります。
カラー +4は、あくまで控えめな CLASSIC CHROME の世界観を壊さず、ほんの少しだけ表情を強めます。リアルで、でもしっかり個性はある―そんな塩梅です。
粒状は控えめで細やかに。ほんのり漂うフィルムライクな質感が、職人の手仕事の情景によく馴染みます。過度に主張せずとも、確かな存在感を添えてくれます。
トーンカーブはハイライトをわずかに抑え(ハイライト: -1)、シャドウを軽く持ち上げる(シャドウ: +2)設定。屋外・屋内のどちらでも白飛びを抑えつつ、影にはほどよい密度を残せます。
ホワイトバランスは控えめに調整し(自動 / R: 0, B: -3)、ほんのりとした温かみを加えることで木の色味がより深まります。シャープネスは +1、スムージングは オフ とし、自然なクリアさをキープします。
「Salty Skipper」は、光環境にも被写体にも幅広く対応できる、しなやかでタフなドキュメンタリー向けのFSレシピ。色はしっかり出るのに、決して騒がず、控えめな佇まいのまま静かに語りかけてくる―そんな懐の深さを持っています。



光と影のあいだで ― 実際の撮影シーン
プロムナードの真昼のまばゆい日差しから、工房のぐっと暗い室内へと移りゆくその落差が、ひときわ刺激的でした。他の設定では破綻したり複雑な調整を要したりする場面でも、「Salty Skipper」は DR200 と抑えめのトーンカーブによって、安定した描写をもたらしてくれます。
工房では青が心地よく冷ややかに響き、木の暖色には控えめな中にもしっかりとした厚みが宿っています。船体越しに向けられた職人の真剣な眼差しも、薄まることなく、そのままの自然さで写し出されています。光、素材、被写体のバランスが揺るがないことこそ、このFSレシピがドキュメンタリー制作で頼れるツールとなっています。
CLASSIC CHROME がいつも驚かせてくれるのは、「控えめなのに表情がある」という絶妙なバランスです。船づくりのように、精密さと素材感、空気が重なる場所では、過度な演出ではなく「そのままを引き立てる」描写が必要になります。CLASSIC CHROME は、それを静かに、誠実に、そして美しく実現してくれます。大げさに語らず、ただそこにあるものを見せてくれるのです。


CLASSIC CHROME で撮るということ
CLASSIC CHROMEは、長年にわたって私の写真表現に確かな影響を与えてきました。派手な色を探すのではなく、光や奥行き、テクスチャーを見るようになりました。
撮影時の判断がスムーズになるので、私は固定のFSレシピでJPEG撮影することが多いです。パソコンの前に座っているより、その場の空気に身を委ねていたいのです。観察し、形にし、手放していく―その流れを繰り返す時間が好きです。
「Salty Skipper」は、まさにそんな撮り方のためのFSレシピです。余白を残しながらも、確かな個性が息づいています。
