建築写真におけるGFX100インプレッション

2022.01.31
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設計:Archipelago Architects Studio

ある人が「建築写真は究極の説明写真」と言っていたのを記憶している。

1日、陽を見ながら影を予想し、それぞれの場所できれいな光の時に撮影をする。一つのプロジェクトを表現するのにあたって、空間全体や素材のディテール、中間距離での要素を絞った写真、毎回一冊の写真集を作るイメージを持って撮影をしている。

『究極の説明写真』、この言葉にずっと引っかかりを持っていたが、GFX100がその考えを超えてきてくれる。

写真家にとって、うまく撮るのは前提条件であって、さらにその写真に何をプラスできるか。その場の気配や、その先を想像してもらえるような写真。

予想を超えた緻密な表現に挑戦することができるため、ワクワクする事が増えた。

GFX100を使用するようになって、写真に対する考え方や撮影スタイルも変わってきた。

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設計:Archipelago Architects Studio

建築の撮影では自然光や定常光での撮影が多い。

自然光での撮影は反射率の異なる素材が重なり合うことに加え、室内は外光との輝度差が強いため、色かぶりも出てくる。以前はフルサイズ一眼レフを使用していて、シャドー・ハイライトが収まるように必ず3〜5カット撮影し、それを後処理で合成して1枚の写真を完成させることもあった。同じカットを段階露光で数枚撮る事が当たり前であり、若干流れ作業という気持ちでいた。

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設計:塚越 龍馬

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設計:塚越 龍馬

しかし、GFX100を使うようになった今はその工程が不要となり、1回のシャッターを切ることに集中できている。

気持ちを込めて押した瞬間のレリーズから伝わってくる感触や振動、撮影の所作も大切にしたいと思えるような、1回で完結する無駄のない動き。フィルムで撮影する時の感覚にとても近く、そう感じられる事が撮影のモチベーションを上げてくれている。

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設計:塚越 龍馬

それを可能にしてくれたのは、ラージフォーマットセンサーのダイナミックレンジの広さである。陰のグラデーションが滑らかで深みがあり、輝度の激しい場所でもRAW現像時にシャドー・ハイライトがジワッと出てくれる。無理やり感のない、自然なグラデーションと質感。全体のバランスが良いためか数値以上の実力を感じる。

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設計:MUKAVATORI

そして複雑な状況下での素直な色再現。自然光・定常光・壁や、床材の色の反射などが重なり合う時でもベースの色再現が素直で扱いやすいため、イメージしている色に近づけやすい。ベースが悪いとどうにもならない事がある。

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設計:湯浅 良介

常用しているフィルムシミュレーションは「PRO Neg. Std」。建築撮影はもちろんだが、アーティストの作品を撮影する際など、複雑な色を自然でフラットな色で表現したい時に最短でイメージに近づけられる。

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設計:湯浅 良介

もう一つ、GFXに装着できる『EVFチルトアダプター』が私にとっては欠かせない存在だ。ローアングルや壁ギリギリにカメラを構えた場合も画作りをファインダー内で完結でき、とても重宝している。

小さな空間の中、広角で撮影するとどうしてもパースが強く出てしまうため、可能な限り引いて撮影することで、写真を実際にその場にいるような感覚に近づけている。室内など限られた空間での撮影が多いのだが、常にEVFチルトアダプターを装着して撮影することで、その場で見ている空間とファインダーに映る空間、それぞれを感覚的に捉えやすい。

そしてGFX100は操作性も非常に良い。撮影では1カット毎に設定を変えることが多く、自分の意図しないボタンの位置や、持った時のホールド感が悪いと、例えどんなに性能が良いカメラでも、ストレスがかかる。フラッグシップ機であるGFX100は撮影時の直感的な操作を可能にしてくれるのはもちろん、それ以上に痒いところにも手が届いている感覚がある。

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設計:ブルースタジオ

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設計:ブルースタジオ

また、水平垂直を意識しての撮影で必須となるのが『チルトシフトレンズ』だ。今はマウントアダプターを使用し、他社製のレンズを使っているが、先日「Gマウントレンズロードマップ」に『チルトシフトレンズ』が加わると発表された。35mmフルサイズ用の『チルトシフトレンズ』ではなく、ラージフォーマット専用レンズを使用できるようになることが非常に楽しみだ。

発売までにGFXを今以上に身体に馴染ませ、迎え入れる準備をしておきたい。

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設計:ARIWRKS

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設計:ARIWRKS