GFX100S II: 風景写真 x 喜多規子

2024.05.27

GFX100S発売以来、愛用して丸3年が経ちました。ラージーフォーマットのカメラとしては小型・軽量であり、1億200万画素の圧倒的な画質は、その場にいる臨場感や空気感まで感じさせる画作りをしてくれます。ここぞというシーンでは必ずこのカメラで押さえておきたい!と思わせてくれるカメラです。GFX100S IIは従来のプロセッサーX-Processor 4からX-Processor5に変更となり、高速連写性能やAF性能が進化し、その可能性をさらに拡げてくれました。

今回は厳冬期の高原での撮影で、マイナス15℃という気温の中、常に手袋をしないと凍傷になりかねないような環境でしたが、ボディに新たに細かい模様のテクスチャーが施されたことで、滑り止めのない手袋でも滑らずにグリップがしっかりフィットし、操作も容易にすることができ、1回も手袋を外すことなく最後まで撮影に集中できました。

また、レンズのラインナップも徐々に増えて、コンパクトなズームレンズと組み合わせることでさらに小型・軽量となり、過酷な環境でもアクティブに持ち運べるようになりました。

前日は大荒れの天候でしたが、翌朝は早朝から回復し、標高2000メートルの高原の朝はマイナス15℃まで気温が下がりました。前日の夕方にライブカメラで状況を確認したので、霧氷になっているという予測はしていたものの、ドキドキしながら目的地まで車を走らせます。残念ながらお目当ての眺めの良い丘の霧氷は、強風で飛ばされていましたが、気を取り直してさらに車を走らせると、奥には予想通りびっしり霧氷が付いていて、ちょうど東の方角が開けているスポットで撮影することができました。

GFX100S II GF100-200mmF5.6 1/3 F16 ISO800 

まだ日の出前の薄暗い時間帯でもAFがしっかり食いつくのを実感しました。ホワイトバランスは太陽光、フィルムシミュレーションをベルビアに設定することで、日の出前の時間帯のブルートーンで描写することができ、焼けた空の微妙なグラデーションの色を幻想的に描写できました。

朝陽が当たると霧氷の木々がピンク色に輝きました。その場に応じてアスペクト比を4:3、2:3、16:9、64:24と選択できるのも1億200万画素だからこそのメリットです。

GFX100S II GF100-200mmF5.6 1/30 F16 ISO400 

光が徐々に全体に回ってきましたが、霧氷を纏ったカラマツが光輝き、とても繊細な描写ができました。

山の天気は変わりやすく、徐々に雲が出てきたので、空が真っ白にならないうちに慌てて手持ち撮影に切り替え、空を見上げながら霧氷を撮影しました。手ブレ補正機能も従来機より進化し、8段分の手ブレ補正効果と相まって、より気軽に手持ち撮影ができるようになりました。

早朝の冷え込みはかなり厳しかったものの、カメラも耐低温性能のため、安心して様々なバリエーションで捉えることができました。

お天気が良くない日にも訪れてみたのですが、びっしりと付いた霧氷に霧が纏い、とても幻想的でした。

GFX100S II GF100-200mmF5.6 1/5 F16 ISO400

まだ全体的に雪が少なく、手前のクマザサに雪が積もっていなかったので、グリーンの色を入れてフレーミングしました。霧氷の枝が1本1本解像しており、緻密な描写力に驚きました。

次に厳冬期に様々な表情を見せてくれる湖面のアート。まさに自然は偉大な芸術家で、驚くべきフォルムを見せてくれます。

今年は暖冬で早朝はマイナス3℃ぐらいの冷え込みでした。湖面に薄氷が張り、陽が差して光が当たるところから徐々に溶けていくのですが、このような虹色の模様が見えました。といっても肉眼では見えるのではなく、レンズにC-PLフィルターを付けて反射を調整することで見えてきます。

GFX100S II GF100-200mmF5.6 1/6 F16 ISO200 

水面に反射した水の色や氷の虹色は出来るだけ鮮やかに見せたいのでフィルムシミュレーションはベルビアに設定しました。

こちらは氷に閉じ込められた気泡でアイスバブルと呼ばれています。湖底の落ち葉などから発生するガスが湖面にたどり着く前に水の中で凍り、氷に閉じ込められ、無数の気泡となります。まるで時が止まっているかのような幻想的な風景を作り出してくれます。

GFX100S II GF120mmF4 1/10 F16 ISO400 

マクロレンズを使って手持ちで撮影しました。ローアングルで狙うことで気泡の層の重なりが見えて立体感を感じることができました。

こちらは湖面に薄氷が張り、薄氷には青空が映り込み、水面には夕陽に輝く対岸の森が映り込んでいます。 

GFX100SⅡ GF100-200mm F5.6 1/15 F16 ISO400

フィルムシミュレーションをベルビアに設定することで湖面の色を色鮮やかに美しく描写してくれました。 

厳冬期の滝では、氷点下が続くと滝の飛沫が氷柱に成長します。これも自然が生んだ芸術作品です。

GFX100S II GF20-35mmF4 1/640 F16 ISO1600

出来るだけ高速シャッターで滝の流れの豪快さを表現したく、ISO感度は1600に上げて、1/500以上のシャッター速度で撮影しました。

西の空が開けているので、夕陽が差し込むと氷柱と滝がオレンジ色に輝きます。高感度に上げてもノイズも全く気にならず、シャドー部の岩の階調も滑らかに描写してくれました。

GFX100S Ⅱ GF20-35mmF4 1/8 F16 ISO80 

GFX100S IIはISO80を常用感度として利用できるようになりました。滝の流れの表情を描写するために1/8というシャッタースピードで表現したいと思い、ISO80に設定したのですが、シャドー部も潰れず、岩のディテールが描写されているのには驚きました。従来機よりもさらに広いダイナミックレンジや低ノイズで撮影することができ、ヌケの良さも感じられました。シャドー部の階調がファインダーでもはっきり確認できるので無駄のないフレーミングができました。

また、時折風向きによって滝の飛沫を直に浴びながらの撮影でも、防塵・防滴なので安心して撮影ができました。

 

GFX100SⅡ GF100-200mm 1/5 F16 ISO800 

太陽はすでに山並みに隠れ、残照によって輝く岩と流れを望遠レンズで切り取りました。フィルムシミュレーションをベルビアに設定することで微妙な反射の色を拾ってくれました。

吹雪いている中、湖面の造形を入れながら雪景色を捉えてみました。

 

GFX100S II GF100-200mmF5.6 1/30 F16 ISO1600 

枝に積もった雪の細かな描写力はもちろんのこと、暗くなっている水面に雪が降っている軌跡まで写し止めることができました。

最後に西の空に沈む満月と北アルプスを狙おうと思い、夜明け前から標高の高い高原へ車で登りました。まだ薄暗く、月は高い位置だったので、夜明け前の街明かりと北アルプスだけを撮影しようと思い、ISO感度を1600に上げて10秒で撮影をしました。

GFX100S II GF100-200mmF5.6 10 F10 ISO1600

高感度・長時間露光で撮影しても画質にまったく影響が出ないのも嬉しい点です。薄暗い時間帯でもAFの食いつきが圧倒的に良くなり、肉眼ではほとんど見えていない北アルプスも月明かりに照らされて神秘的でした。

空も明るくなり日の出前の西の空にはビーナスベルトに沈む満月が輝いていました。

GFX100S II GF45-100mmF4 1/50 F10 ISO800 

アスペクト比を64:24にすることで北アルプスの連なる山々を捉えることができました

その後、北アルプスの山々がバラ色に美しく染まり、沈む月と撮影できました。

GFX100S IIは、冬の過酷な環境下でもアクティブに使え、撮影者の気持ちをより高めてくれるカメラだと実感しました。目で見た以上の感動をファインダー越しに感じることができます。また、シャドー部の階調の滑らかさがはっきり分かり、無駄なフレーミングを防いでくれます。AF性能も良くなり、ストレスなく撮影できるのも嬉しい点です。普段三脚を使って撮影することが多いのですが、ボディ内手ブレ補正も進化し、表現の幅が広がる可能性も感じました。ラージーフォーマットというと「重くて、取り扱いが大変そう…」というイメージがあると思いますが、そのような方にぜひ手にとって使っていただきたいカメラです。