マルタ諸島は、生き続ける博物館です。その街並みや風景には、数千年にわたる人間の営み、人々の共有された記憶、そして視覚的な歴史が豊かに刻まれています。この織り重なる文化を理解する上で中心となるのが、マルタの歴史を記録した写真記録アーカイブです。リチャード・エリス・アーカイブの情感あふれる画像、マルタ国立公文書館の公式記録資料、そしてマルタ画像保存アーカイブ(MIPA)の厳選されたコレクションなどがそれにあたります。 これらの貴重な資料は、脆弱で劣化が進み、多くの場合唯一無二のものであるため、技術的に厳格でありながら、その遺産的価値を尊重した保存が求められています。この課題への対応として、デジタル写真は利便性を超え、記憶と文化を保存するための不可欠な手段となっています。

マルタに関連する歴史的写真資料として最大規模のデジタルアーカイブあるマルタ画像保存アーカイブ(MIPA)は、すべてのアーカイブ資料のデジタル化にFUJIFILM GFXカメラシステムを使用しています。
文化遺産におけるデジタルの必要性
写真プリント、ネガ、スライドは時間の経過に脆弱です。銀鏡化、物理的摩耗、化学的劣化によって細部は徐々に判別しづらくなり、記録された情報が失われていきます。デジタル化は資料の状態を安定させ、未来の世代に向けて研究・共有・保護が可能な耐久性ある代替資料を作成します。一方で、その成果は撮影技術の質に依存します。
文化遺産機関、特に国家の記憶を記録する使命を負う機関にとって、デジタル化の技術的要件は極めて厳格です。デジタル複製物が原本の信頼できる表現となるためには、正確な階調再現、高解像度、低ノイズ、そして忠実な色再現が不可欠です。そこで登場するのが、富士フイルムのラージフォーマットデジタルシステム「GFX 100S」と「GFX 100 II」です。
FUJIFILM GFX:最高の忠実度を実現するラージフォーマット
FUJIFILM GFX 100SとGFX 100 IIの核心を成すのは、1億200万画素のラージフォーマットCMOSセンサーです。これは一般的な35mmフルフレームセンサーよりもサイズが大きく上回ります。拡大されたセンサー面積は、本来の解像度の向上と繊細な階調表現を実現するとともに、受光量の増加によってダイナミックレンジを大きく広げます。 アーカイブ用デジタル化の作業において、粒状感、ディテール、シャドウの微妙な相互作用といった微細な質感が、驚くほど鮮明に再現されることになります。
文化遺産の保存・修復作業において重要な技術的強みは以下の通りです:
- ディテールまで描き出す高解像表現
1億200万画素の高解像度センサーにより、微細なディテールまで正確に記録でき、忠実度を保ったまま大判複製に適したアーカイブ用マスターを生成することができます。 - 階調の豊かさを備えた広いダイナミックレンジ
ハイライトおよびシャドウ部のディテールを確実に保存できることは、経年劣化や不均一な処理が施されたオリジナル資料の保存において極めて重要です。 - 色精度と再現性
富士フイルムのカラーサイエンスと高ビット数のRAW撮影の組合せにより、歴史的文書の微妙な色合い、初期白黒写真の繊細な階調、そして多様なカラー乳剤が持つ色彩を忠実に記録します。 - ノイズを抑えた高ISO性能
アーカイブスタジオでよく見られる低照度環境下でも、センサーの性能によりノイズを最小限に抑えつつ鮮明さを維持します。これは、強い照明を当てることができない古いネガを複製する際に、非常に貴重な利点となります。 - 安定性とワークフローの効率性
GFXシステムは、人間工学に基づいたデザイン、防塵防滴ボディ、そして信頼性の高いオートフォーカスを備え(多くの場合、高品質なフジノンGFレンズと組み合わせて使用)、長時間にわたるデジタル化作業の効率化、作業者の疲労軽減、ならびに出力の一貫性向上に貢献します。
よりコンパクトでコスト効率に優れたラージフォーマットソリューションであるGFX100Sと、処理効率の向上、洗練されたオートフォーカス、操作性の改善を誇るGFX 100 IIにより、画像品質を損なうことなく、文化遺産のデジタル化プロジェクトに柔軟性をもたらします。 マルタのCiancio 1913 Co. Ltd.から提供された2台のFUJIFILMGFXに加え、FUJINON GF32-64mmF4 R LM WR and GF120mmF4 R LM OIS WR MACROを使用することで、35mmからA0サイズまでのあらゆるサイズの資料、プリント、ネガを最大4億画素でデジタル化できる、2台体制によるシステムが実現しました。

リチャード・エリスが撮影した、1897年8月、ドライドック内にある HMS Vulcan の船首部を捉えた写真。12×10インチのゼラチン乾板ネガから、FUJIFILM GFX100S と FUJINON GF32-64mmF4 R LM WR を使用してデジタル化。
リチャード・エリス・アーカイブ提供。
マルタの写真遺産のデジタル化
マルタ国立公文書館などの機関は、市民生活、公共事業、国家の発展を記録した公文書を所蔵しています。グイド・スティロンやシグリッド・ノイベルトを含むこれらの写真コレクションは、富士フイルムのGFXシステムを用いてデジタル化され、マルタの変遷するアイデンティティを辿るものです。リチャード・エリス・アーカイブには、ドキュメンタリーでありながら芸術的な、他で保存されていない人々、場所、物語を捉えた印象的な画像が収められています。 一方、マルタ画像保存アーカイブは、デビッド・ライトソンやジェラルド・フォルモーサのコレクションなど、地域社会から提供されたものやプロによる数千点に及ぶ画像の保管役を担っています。これら一枚一枚が、マルタ諸島の視覚的歴史を紡ぐ糸となっています。

FUJIFILM GFX100 IIとFUJINON GF120mmF4 R LM OIS WR Macro でデジタル化された、グイド・スティロンのエキザクタカメラ。MIPA提供。
こうした背景において富士フイルムのGFXシステムが果たす役割は以下の通りです:
- 長期保存およびアクセスに適した高解像度のデジタルマスターを作成できること。
- オリジナルを損傷させるリスクを負うことなく、研究、出版、展示を支える画像を提供すること。
- アーカイブ用画像に関する国際基準に準拠したデジタル保存ワークフローを実現すること。



GFXシステムを用いてデジタル化された資料をもとに制作された2つの画期的な出版物、『100 Years of Photography in Malta, 1839–1939』および『Victorian Malta』は、いずれも2025年に出版されました。著者チャールズ・ポール・アッゾパルディ博士およびMidsea Books提供。
こうした所蔵資料のデジタル化は、技術的精度とアーカイブの完全性を両立させることで、マルタの視覚的遺産を、研究・教育・公共利用のために、未来の世代へと確実に引き継いでいます。これにより、マルタの写真史を記録した画期的な出版物がすでに数点刊行されています。例えば、マルタの写真史における事実上の百科事典とも言える『100 Years of Photography in Malta, 1839–1939』(2025年刊行、すでに完売)や、2022年に開催されたリチャード・エリス・アーカイブ150周年記念展を記録した画期的な出版物などが挙げられます。
150 – エリス展 キュレーター紹介

2022年に開催された「150 – Ellis」展は、リチャード・エリス・アーカイブの150周年を記念するものでした。展示用の資料はすべて、FUJIFILM GFX100S とFUJINON GF32-64mmF4 R LM WR GFX 100sと32-64mmを使用し4億画素のマルチショットモードでデジタル化されました。リチャード・エリス・アーカイブ提供。
文化的影響の広がり
デジタル化を通じてマルタの写真遺産を保存することは、単に画像を保護するだけにとどまりません。それは人々の共有された記憶を育むことでもあります。デジタル化されたアーカイブは、探求、教育、解釈のためのプラットフォームとなります。それらは、研究者が比較研究を行い、地域社会が自らの過去を再発見することを可能にし、歴史に根ざした確かな視覚的物語が、文化観光を支えます。 マルタがデジタル保存に取り組む上で、機材の選択は重要です。FUJIFILM GFX100SとGFX100 IIは、アーカイブとしての卓越性に必要な解像度、忠実度、信頼性を兼ね備えています。国の視覚的記録の微妙なニュアンスを捉えるという緻密な作業において、これらのカメラは単なる道具ではなく、文化的記憶を管理するパートナーなのです。
https://www.maltarti.tv/portfolio/100-years-of-photography
『マルタの写真史 100年:1839–1939』特集映像