X-E5 x Bao Zoan

2025.08.07
X-E5_Vao Zoan_11のコピー
Photo 2025 © Bao Zoan | FUJIFILM X-E5 and FUJINON XF33mmF1.4 R LM WR, 1/10 sec at F16, ISO 125

X-E5 x Bao Zoan

この街に足を踏み入れたとき、いずれ機械工学の学位を手にして帰るものだと思っていた。けれども、人生の方向は少しずつ変わりはじめ、自分を成長させる機会を求める気持ちが次第に強くなっていった。

そんな変化の中で、写真がこの街との縁を深めてくれた。今では主に商業写真の撮影に時間を費やしているが、仕事の合間や日常の中でふとした瞬間に出会うたびに、生活の風景をカメラに収めることを欠かさない。 写真を通じて、この街は単なる滞在先ではなく、私の人生の一部になっていった。

ホーチミンの暮らしは、大通りや路地、階段、歴史あるアパートメント群、そして現代的な都市開発エリアとともにある。街をさまよい、どんな路地へでも足を踏み入れていくことは、季節とともに移り変わる光を探す私なりの方法だ。

急速に発展する都市のリズムと、常に足早に行き交う人々。その響き合いが、この街を写真に収めるたびに新鮮な驚きを与えてくれる。 日々たくさん歩くことで、私とFujifilm X-E5は、撮影の旅をともにする柔軟な相棒となっていった。このカメラの軽量かつコンパクトなサイズ感は、どんな環境でも撮影へのインスピレーションを与えてくれる。

この街の天気は、主に暑くて雨が多い。そして、私は暑さがあまり得意ではない。だからこそ、過ごしやすく、街の活気が増す午後4時以降に撮影することを選んでいる。

夜には、XF33mmF1.4 Rレンズを使用している。このレンズは、私がもっとも使い慣れている50mm相当の画角に近く、非常に重宝している。X-E5はボディ内手ブレ補正を搭載し、最大約4,000万画素まで対応するセンサーも備えている。これにより、トリミングを活かした表現でも、一定の画質がしっかりと保たれる。

夜の撮影は難しく感じられるかもしれないが、複雑な光源に挑む意欲と、それに応えてくれる信頼できるカメラがあれば、不安は自然と消えていく。

X-E5との旅で最も印象的だった瞬間は、新しく開通した電車が運行を始めたのと同時に、街の灯りが一斉に灯る光景をとらえたときだった。それはまるで、この街の現在を映し出す、鮮やかなポートレートのようだった。

X-E5を手に取ったとき、まず目を引くのは、そのデザインに組み込まれた「フィルムシミュレーションダイヤル」だ。このダイヤルは、まるで独立した小さなおもちゃのような存在で、CLASSIC CHROMEとPROVIAのカラーを切り替えるたびに、遊び心がくすぐられる。何度使っても楽しい。

実は、カメラに搭載されているすべてのカラーシミュレーションを使いこなしているわけではないが、CLASSIC CHROMEを頻繁に使ってしまうのは、初めてFujifilmのX-T1を手にしたときからの癖のようなものだ。X-E5になってもなお、その色合い、シャープネス、そしてどこか懐かしさを感じさせるクラシックな質感は、Fujifilmならではの感覚をしっかりと保ってくれている。 

最近よく足を運んでいるお気に入りの場所が、4区にある古いアパートの屋上だ。広々とした開放的な空間からは、視界の先に広がる街の風景を見渡すことができる。老朽化した低層の建物群から、高層ビルが徐々に密集していく様子が一望できるのだ。

この場所では、広大な景色を背景に、ゆっくりとした日常の営みが静かに繰り広げられていく。その対比を観察するのが好きだ。カメラに搭載されたデジタルテレコンバーター機能のおかげで、その場で構図を直感的に決めることができる。もちろん、あとからトリミングで調整することも可能だが、撮影の瞬間に完璧な画づくりができることで、あとから大きな画面で写真を見返したときにも、当時の感情がそのままよみがえる。

その「いま、この瞬間」が写真にしっかりと刻まれていることが、何よりも大切だと感じている。

長年カメラを手にしてきた中で、私が築いてきた視覚的な言語は、リアルな環境への誠実なまなざしと、自分が愛する映画的なフレーミング、そして日常写真における予測不能な偶然の一瞬——それらすべての要素が同時に交錯することによって生まれている。

ファインダーを覗き込み、目の前で起こる人々のやりとりにピントを合わせ、そのまま息を潜めて待つ。その時間の中では、世界がまるで静寂に包まれているように感じられた。写真という世界の中に、観客は自分ひとりだけ——そんな特別な感覚が、私にとっての撮影の核心にある。