PRO Neg.Std FS RECIPE x Paolo Emanuele Barretta

PRO Neg.Std FS RECIPE x Paolo Emanuele Barretta

2026.05.27

FSレシピ「Velvet Hase」は、私のビジュアル表現を一貫性と再現性のあるフィルムシミュレーションとして具現化したいという思いから生まれました。そのベースには、PRO Neg. Stdのトーンがあります。

私はこれまでポートレートやファッションポートレートの作品において、写実性にとらわれず、より感情的で、どこか浮遊感のある、映画のワンシーンのような表現を目指してきました。このFSレシピは、そのような空気感をカメラ内で一貫して再現できるようにし、意図的な表現へと昇華させる試みです。

出発点となったのは、スタジオでの光の使い方でした。私はフラッシュと定常光の両方を用いながら、コントロールされたライティングで撮影することが多く、柔らかさと構造感のバランスを追求しています。過度にシャープで無機質な肌の描写には興味はなく、むしろ「すべてを語るのではなく、想像させる」ようなイメージを求めています。そのため、ややトーンをデチュレート(性質を和らげる)しつつ、繊細でありながら意図のあるカラーパレットを持ったシミュレーションを開発しました。彩度を抑えながらも画の立体感を損なわないことを重視しています。色彩はより静かに整えられ、感情や被写体の存在感が前面に立ち上がるように設計されています。

「Velvet Hase」において、シャドウは中心的な役割を担っています。私はシャドウを深く、そして明確に保つことを選びました。なぜなら私にとってシャドウは、取り除くべき欠点ではなく、物語を語るための要素だからです。立体感を形づくり、神秘性を生み出し、画に視覚的な重みを与えます。このFSレシピにおいて、シャドウは隠すために存在するのではなく、親密さと距離感を同時に生み出すために用いられています。それは、従来のファッション写真よりも、むしろ映画的な表現に近い視覚的な緊張感を生み出します。

「Velvet」という名前の由来は、肌のトーンやハイライトの描写表現にあります。私は、荒さや急激な変化のない、滑らかで緩やかなトーンの移行を実現することに注力しました。ハイライトは丁寧にコントロールされ、決して強く出過ぎることはなく、肌の質感もよりソフトで、過度に説明的にならないようにしています。このアプローチにより、エレガントで時代に左右されない美しさが保たれ、プロフェッショナルなポートレートやエディトリアルファッションに適した表現となっています。特に、細部のすべてが意図的に設計されるスタジオ環境において、その効果が発揮されます。

「Velvet Hase」は、極端な表現ではなく、信頼性があり抑制の効いたシミュレーションとして設計されています。被写体に強く主張するのではなく、そっと寄り添う存在です。それは、私自身の撮影スタイル──観察し、削ぎ落とし、単純化していくプロセス──を反映しています。最終的なイメージは、完全なリアリズムでも、完全な抽象でもありません。光と色が調和しながら、「説明」ではなく「感覚」を生み出す、夢のような中間領域に存在しています。

このFSレシピを制作することは、私自身のクリエイティブプロセスの速度をあえて緩めるための手段でもありました。一貫したビジュアルの基盤を持つことで、被写体との関係性や、ポーズ、表情といった要素に、より意識を向けることができます。FSレシピはワークフローの中核となる要素となり、後処理で加えるひとつの工程ではなく、撮影の瞬間に下される意識的な選択として機能します。

最終的に「Velvet Hase」は、私のポートレートに対するアプローチを統合した表現です。柔らかさと構造、感情と制御が共存するイメージであり、ファッションとシネマが交差する領域に位置しています。そして写真は、「説明するもの」ではなく「解釈の余地を持つ場」として機能します。このFSレシピは、空気感や奥行き、そして直線的ではなくより想起的で余韻のある美しさを求める人のために設計されています。