Monster on set of Chispa

FUJIFILM GFX100 II: 認識を改めて

2023.09.26

映画監督Karina Ripper氏と撮影監督Sarah Whelden氏がFUJIFILM GFX100 IIとフジノンプレミスタシリーズのシネマレンズの使用感を語る。

Karina Ripper氏の最新作『チスパ』は、多様なスタイルを駆使して女性蔑視の問題に立ち向かい、彼女達への否定的な認識を変えていく過程を探求する。

FUJIFILM GFX100 IIの高度な映画制作能力とFUJINON Premistaシリーズのシネマレンズとの互換性を活かして制作されたこの映画は、前進的な変化の旅を記録しているとKarinaは語る。

「観客たちを夢中にさせたいの」と彼女は話し始める。「この映画の冒頭は事実に基づいた実直な内容だが、やがてダンス映画へと変化していく。この主人公が自分の怒りをすべて吐き出すことができるということを表現しているだけでなく、一人の女性として多くのことを表現しているのだと私は思う」。

「まるでRobert Bresson監督とジュラシック・パークを融合させたみたいだ、とプロデューサーと話していたよ。二つの相反するアイデアだけど、私はこの二つが大好き。私には抑制された世界とワイルドな世界の両方があるのだと思う」と微笑む。

Close up portrait of Director Karina Ripper

多彩な品質

この作品は夜のさびれたショッピングモールが舞台であるが、現場の都合上、営業時間中の白昼で撮影する必要があった。GFX100 II、プレミスタシリーズのレンズ、そしてKarinaの撮影監督(DP)であるSarah Whelden氏の力量を試すには絶好の機会であった。

「巨大な天窓があるから、撮影中いかに室内を暗く感じさせるかが最大の課題でした」とKarinaは振り返る。「その点、Sarahと彼女のチームはよくやってくれたわ」

Sarahはこう続ける: 「私たちは最高のチームに恵まれたけど、ショッピングモールを真っ暗にするのに必要な規模には遠く及ばなかったから、たくさんの困難に直面したの!隙間から光が降り注ぐような晴天の日もありました」とSarahは説明する。

そんな逆境の中で、いかにGFX100 IIの1億200万画素大判センサーが彼女にとって大きな役割を果たしたかを語ってくれた。

「GFX100 IIはとても優秀でした。ダイナミックレンジとハイライトのロールオフに感動しました」と彼女は熱く語る。

「影の空間を広げるために1段露出オーバーになるようにしてみたけれど、背景が深かろうが、我々に近かろうが、露出の問題にぶつかることは決してなかったわ。見事なことに、膨大な情報量が詰まっていました。」

Close up of FUJINON Premista lens

圧巻のF-Log

F-Log映像の万能性は、ポストプロダクションにおいて大きなゆとりをもたらしてくれる。

「F-Logの柔軟性に非常に感銘を受けたわ」とSarahは語る。「この映画はモノクロで制作したけれど、色のコントラストがない分、カメラにはより多くのことが要求される」。

「この作品の多くは暗い場所で撮影されるため、細かい影の描写が必要でした。カメラが提供するものにはすでに満足していましたが、必要に応じて引き出せる情報の多さに驚きました」と語った。

「Karinaも私も、そして撮影現場の誰もが録画データに圧倒されたわ。」

Karinaも同意する: 「最後の方に得られた映像は圧巻でした。お気に入りのテイクを選ぶのが難しい。」

Movie camera rig on set

光学精度

また、Karinaはこの映画で使用されたPremistaシリーズのシネマレンズも賞賛している。「とても素晴らしいレンズでした。このようなプロジェクトで使用したレンズの中でも最高のものです」 と彼女は熱く語る。

Sarah が撮影現場で使用していたPremista 19-45mmT2.9、 28-100mmT2.9、 80-250mmT2.9-3.5は、光学的にもロジスティック的にも最高の相棒だったと語る。

「とても美しく、きれいなガラスです」とSarahは言う。「過度に臨床的でなく、それでいて冒険する余地を残しています。フジノンのすべてのシネマズームについて言えることだけど、Premistaシリーズはさらに上の次元にあると思う。」

「Premista 28-100mmT2.9は広い範囲をカバーできるので、長期間にわたってこのレンズ一本で撮影することができました。この撮影は進みが早かったので時間の節約になりました」と彼女は強調する。

DP filming scene in shopping mall

確かな安定性

Sarah はさらに、GFX100 IIの8段分のボディ内手ブレ補正機構(IBIS)がこの映画のユニークなスタイルを実現する上で大きく貢献したことを指摘する。

「この映画には3つの要素がある」とSarahは説明する。「最初はノワールのような探索から始まり、ダンスや 動きを取り入れた作品に変化する。そこから、2つを融合させた生き物のような作品へと入り込んでいく」とSarahは説明する。

「この作品ではさまざまな瞬間にそれぞれの創造的なアプローチが必要だったの。その多くは照明やレンズによって得られたけれど、大部分はカメラの動かし方にありました」と彼女は断言する。

「とても滑らかな手持ちもあれば、ものすごく荒々しいのもある。」

「例えば、映画の中で俳優の一人が廊下を疾走するチェイスシークエンスがあるけど、そういった動きでもIBISのおかげでゆがみが発生することなく、思い通りの重厚感を実現することができた。」

DP with camera on shoulder filming scene in shopping mall

効率化されたワークフロー

Chispaのような作品を世に送り出すには、一日一秒無駄にするわけにはいかない。限られた時間のタイトなスケジュールでロケを行うことは、肉体的にも創造的にも大変なことだ。

だからこそ、GFX100 IIのネイティブFrame.io Camera to Cloud(C2C)機能は特に好評だ。この組み込み機能により、ユーザーはカメラからワイヤレスで直接Frame.ioにプロキシファイルを自動的にアップロードし、世界中のチームメンバーと即座に共同作業を行うことができる。

一度ファイルがアップロードされると、プロジェクトフォルダーへの安全なリンクがあれば、場所を問わず誰でもファイルを閲覧、ダウンロード、さらには注釈を付けることも可能だ。必要なのは有効なインターネット接続を持つデバイスだけである。

C2Cテクノロジーがあれば、撮影現場のチーム、遠隔地のエディターやプロデューサー、あるいは商用クライアントであろうと、映画制作者は制作中のテイクをすべての関係者と共有することができる。

これにより報告義務が満たされ、プロセスは合理化され、最終的にはポストプロダクションで不本意な事態を招くことなく、その日のうちにクリエイティブビジョンが達成されるのだ。

Karinaは今回のプロジェクトで当日のテイクを見直す際にC2Cが特に役に立ったという。

「気づいたら毎朝、日課として活用していたよ」とKarinaは振り返る。「今まで作ってきたものを一目で確認することができました。前日に収録したものに目を通し、必要であれば考え直したり、追加のショットが必要かどうか自問したりするの。」

「瞬時にアクセスできることは監督としてとても重要なことだと思うわ。過去のプロジェクトでは味わえなかったことなので、最高でした」と彼女は締めくくった。

メイキング映像